エレキギターの『倍音』とは? 奇数倍音・偶数倍音から歪み・音色との関係まで徹底解説

2026年10月13日

最近FuzzとDualPitchの組み合わせにハマってます。巫秋月(かんなぎしゅうげつ)です。

今日は『倍音』について解説していきます。

最初に言っておきますが、周波数のお話なので馴染みの無い人には難しく感じると思います。
しかしこの『倍音』を理解出来ているか否かでギター本体や音作り、バンドアンサンブル等々ほぼ全てにおいての理解力が変わります。それはもう圧倒的に変わります。
大袈裟に言えばバックビートと倍音はエレキギター界の真理の扉と言っても差し支えないくらいには変わります。

なので一度で全てを理解しようとはせずに、分かる所から理解を深めて行ってください。ある程度分かってくると朧気に何かが見えて来るはず( ˙꒳​˙ )

はじめに

まずはこの画像をご覧ください。

微妙に間違っている気がしないでもないけど概ねこんな感じです。

細かい彼是を理解しなくてもいいので、音を可視化するとこんな感じなんだな~とだけ認識しておいてください。

少なくとも、この画像を見たことでこの後解説する話が大分理解しやすくなると思います\( 'ω’)/

周波数とは?

上記の画像の波線をサイン波と呼びます。

ギター弦で言うならダウンピッキングをすると弦は下→上→真ん中と動きますね? この下→上→真ん中までの1サイクルを周期と呼びます。サイン波で言うと真ん中から始まって上→下→真ん中までですね。俗に言う正弦波っていうヤツです。

この周期を1秒間で何回繰り返すかっていうのが周波数ですね。1Hzなら1秒間に1周期ですよーっていう事。

波形は(上下に)大きくなると音量が上がり、周波数が上がると音が高くなります。
ギター弦で言えば開放弦は振幅速度が遅いので周波数が低い=音が低い&弦の振れ幅が大きいので音量も大きくなりますよね。同様にハイフレットだと振幅速度が上がるので音が高くなるし、振れ幅が小さいので音量が小さくなるっていうわけです。

ハイフレットのサステインが伸びにくい理由もこれに由来するし、同じ音でも弦が変わると微妙に違って聞こえるのもこの振幅の差による倍音成分の違いが原因となっております。
どういう事って思われるかもしれませんが、ギターとピアノで同じ周波数の音を出しても高さは同じでも聞こえてくる音色って全然違いますよね? それと同じ事がギター弦(6弦5フレット≠5弦開放みたいな感じ)でも起こってますよって事で御座います。

倍音とは?

弦を弾くとメインとなる音の振動と同時に半分、3分の1、4分の1……と細かく分割された振動も起こします。
開放弦を例に出すと1/2の12F、1/3の7F(19F)、1/4の5Fの音も同時に出ているって感じですね。この場合開放弦(基音)がルート音で倍音がコードトーンみたいな役割だと思って貰えれば理解しやすいと思います。

  • 基音:弦全体の振動による、最も低くて基本となる音(私たちが「音程」として認識する音)
  • 倍音:基音の整数倍の周波数を持つ、高い音の成分

例えば5弦開放(A=110Hz)の場合、倍音は次のように並びます。

次数種類周波数音名の目安基音との関係
1基音110HzA2—
2偶数220HzA31オクターブ上
3奇数330HzE41オクターブ+完全5度
4偶数440HzA42オクターブ上
5奇数550HzC#5(やや低め)2オクターブ+長3度
6偶数660HzE52オクターブ+完全5度
7奇数770HzG5(かなり低め)2オクターブ+短7度
8偶数880HzA53オクターブ上
9奇数990HzB53オクターブ+長2度

これを倍音列と呼びます。実際の音は、これらの倍音が同時に鳴った合成音です。

また、実際の演奏では弦は上下以外にもZ軸(奥行き)での振動も発生しています。この奥行きの振動も倍音成分の一つの要素になります。

倍音が音色を決める理由

周波数の項でも述べましたが、同じ音程(周波数)でもギターとピアノで音が違って聞こえるのは、倍音の含まれ方(強さのバランス)が違うからです。

  • 高次倍音が多い → 明るく、鋭く、きらびやかな音
  • 低次倍音が中心 → 太く、丸く、温かい音

エレキギターの『ブライトな音』『ファットな音』の違いも、倍音バランスの違いとして説明できます。

エレキギターで倍音バランスが変わる要因

ピッキング位置

ブリッジ寄りで弾くと高次倍音が増え、硬く鋭い音に。ネック寄り(指板側)で弾くと低次倍音が中心になり、丸く柔らかい音になります。

この辺はギタリストよりベーシストの方が詳しいと思います。指弾きにしろピック弾きにしろ一番最初に習うのはここですからね。当然私はブリッジ寄りメインで弾いてます。

ピックアップの位置

ピックアップは、取り付けられた位置での弦の振動を拾います。

  • ブリッジ側(リア):振動幅が小さい位置。高次倍音の比率が高く、ハリのある音
  • ネック側(フロント):振動幅が大きい位置。低次倍音が豊かで、太く丸い音

フロントとリアを切り替えたときの音の違いは、この倍音の拾い方の違いが大きく関係しています。

弦・ピック・素材

  • 弦のゲージや材質(ニッケル、ステンレスなど)
  • ピックの硬さや厚み(硬いピックは高次倍音が出やすい)
  • ギター本体の木材やスケール長

これらも倍音の出方に影響します。

ディストーション・オーバードライブ

歪みエフェクトは、信号を意図的にクリッピング(波形の頭を潰す)することで、元の音にはなかった倍音を新たに生み出します。どんな倍音が増えるかは、次の奇数倍音と偶数倍音で詳しく見ていきます。

奇数倍音と偶数倍音:音色の『硬さ』と『丸さ』を分けるカギ

倍音列の中で、次数が奇数のもの(第3、第5、第7……)を奇数次倍音、偶数のもの(第2、第4、第6……)を偶数次倍音と呼びます。基音は第1倍音にあたるので、奇数側に数えます。先ほどの倍音列の表を見ると、奇数と偶数で音楽的な性格が違うことが分かります。

偶数倍音の特徴:オクターブ系で協和的

偶数倍音の第2、第4、第8倍音は、基音と同じ音名(オクターブ違い)です。第6倍音も第3倍音のオクターブ上なので、基音の完全5度にあたります。つまり偶数倍音は、オクターブや5度など協和度の高い音程で構成されています。

  • 音の印象:太い、丸い、温かい、ふくよか、甘い
  • 基音を補強するように響くため、音程感がはっきりして厚みが増す
  • 聴感上『音楽的』『心地よい』と感じやすい
  • 所謂アナログ系、ヴィンテージ系のサウンド

奇数倍音の特徴:3度・7度が入り、輪郭が強くなる

奇数倍音には、オクターブ以外の音程が含まれます。

  • 第3倍音:完全5度(オクターブ上)
  • 第5倍音:長3度(2オクターブ上)
  • 第7倍音:平均律から大きくずれた短7度(かなり低め)

とくに第7倍音以降は平均律の音程とずれが大きく、濁りや硬さ、エッジを感じさせる要素になります。

  • 音の印象:硬い、鋭い、パワフル、ガリッとした、中空感のある(クラリネットに近い)
  • 音の輪郭が際立ち、バンドの中で抜けやすい
  • 奇数倍音だけで構成される波形が矩形波(方形波)で、電子的で無機質な音になる
  • ハイゲインなトランジスタ(ソリッドステート)アンプやデジタル系の歪みペダルにありがちな音がする

歪みで生まれる倍音:対称か非対称か

エレキギターで奇数・偶数倍音を意識するうえで、とくに重要なのが歪みです。歪みの回路は、波形をクリッピングして倍音を新たに生み出します。

クリッピングの形増える倍音音の傾向
上下対称奇数倍音が中心硬質、パワフル、攻撃的
上下非対称偶数倍音も増える丸み、温かみ、太さ
  • 対称クリッピング:ダイオードを上下対称に配置したオーバードライブ、ディストーション、ファズなどが代表的です。奇数倍音が強調され、ハードロックやメタルで求められるアグレッシブな質感になります。
  • 非対称クリッピング:ダイオードの数を上下で変えた回路や、真空管の3極管ゲインステージなどが該当します。偶数倍音が加わり、ふくよかでコンプレッション感のある歪みになります。

『真空管は偶数倍音』は本当?

これは前回の記事(動画)でも軽く触れた内容になるのですが、『真空管アンプは(偶数倍音が)豊かで温かい』みたいな事を言う人結構居ません? まぁ私自身Helixで真空管パラメータとか弄りながら何となくそれっぽい感じがあるなぁとは思っていたのですが、

  • プリ部の3極管ゲインステージは非対称にクリップしやすく、偶数倍音が生まれやすい
  • 逆に5極管だと奇数次倍音(特に3次倍音)が強く出て対称に近いクリップをする
  • 一方、多くのギターアンプのパワー部はプッシュプル構成で、偶数次の歪み成分が打ち消され、奇数次が残りやすい
  • 実際の音は、プリ管・パワー管・出力トランス・スピーカーなどが総合的に作るため、『真空管=偶数』とは言い切れない

という事で一応そういう傾向はあるけどそれ以上でも以下でも無いよねっていう身も蓋もない結論になりました。

いやだって皆が言ってる事ってヘッドルーム(あるいは真空管)が飽和する感じがアナログチックで良いよねって事でしょ? 私も最近そういうアナログなニュアンスとか作って楽しんでますけど、=偶数倍音かと言われると答えはノーって感じなんですよね。前回の記事で言えばレクチはFatalityと比較して偶数倍音の成分は増えてるけど(正確にはFatalityが偶数倍音成分を消しているわけですが)偶数メインとまでは言えないですし……。

歪ませたパワーコードが濁りにくい理由

歪みと倍音の関係は、コードの響きにも影響します。ルートと5度だけのパワーコードは、周波数比が約2:3で、歪みで生じる倍音や合成音が互いに協和しやすい関係にあります。一方、3度を含むコードは、歪ませると濁りや不協和な成分が目立ちやすくなります。ハイゲインでパワーコードが多用されるのには、こうした理由もあります。

尚、これらの奇数・偶数倍音の傾向はあくまで一般的な目安です。実際の聴感は使用機材、回路構成、スピーカー、演奏の仕方などで変わります。

※度数とは:ドレミファソラシド=1234567度(7度は1度のオクターブ上)。ルート音を1度として、何度音が上がるかを表す。Cのパワーコードは1度(C)+5度(G)7度(C)なので音で言えば実質1度(C)+5度(G)の2音構成になる。なので昔は5度法とか5度コード、5thコードという風に呼んでた。

余談だが和音(コード)は3音以上の構成を指すので実質2音構成のパワーコードは和音ではないという扱い。

ハーモニクス奏法:倍音を狙って取り出す

倍音を意図的に鳴らすテクニックがハーモニクスです。弦の特定の位置に軽く触れ、その位置に『節』を作ることで、基音を消して特定の倍音だけを響かせます。

ナチュラルハーモニクス

開放弦を使い、フレット線の真上に指を軽く触れて弾く方法です。

フレット弦長に対する位置出る倍音音程
12F1/2第2倍音1オクターブ上
7F(19F)1/3第3倍音1オクターブ+完全5度
5F(24F)1/4第4倍音2オクターブ上
4F(9F、16F)1/5付近第5倍音2オクターブ+長3度

コツ

  • 指はフレットの真上に弦を押さえつけずに軽く触れる
  • 弾くのと同時に指を離す
  • 12Fが一番出しやすいので、まずはここから練習する

アーティフィシャルハーモニクス(人工ハーモニクス)

左手で押弦した音を基音とし、その12フレット上(=弦長の半分の位置)に右手の指を触れて弾く方法です。ちなみに私が最も苦手なハーモニクス(実質出来ないと言っても過言ではない)なので偉そうなことは言えません。

ちなみにコードを押さえたまま12F上(もしくはPUの上の良い所)をブリッジミュートするような感じでピッキングするやり方もあります。私はこうやって逃げ回って来た。

ピッキングハーモニクス

ピックで弾く瞬間に、親指の側面などで弦に軽く触れ、基音を消して倍音を出す奏法です。ロックやメタルで『キュイーン』という鋭い音を出すときに使われます。過去の私はこいつのせいで引退し、今の私はこいつのせいでギターをまた弾いているという裏話があります。どうでもいい? そんな冷たい事を言わないでくれ。

  • 触れる位置と弦の位置で出る倍音が変わる
  • 歪ませたアンプ、特にリアピックアップで出しやすい
  • ピックから親指を少しはみ出させて握るのがコツ

タッピングハーモニクス

左手で押さえた音の12フレット上(など)を、右手指で軽く叩く(タッピングする)ことで倍音を出す方法です。これが出来ればfripSideは大体何とかなる。指先でフレットを『カーンッ』と鳴らすイメージ。最後の『ッ』が重要で叩くことより離すことを意識すると良き。

倍音とチューニングの関係

ハーモニクスは純粋な整数倍の音程に当たります。そのため平均律で調律されたギターとはズレが生じることがあります。

  • 第3倍音(7F)は平均律の5度より、やや高め(約2セント)
  • 第5倍音(4F)は平均律の長3度より、かなり低め(約14セント)
  • 第7倍音は平均律の短7度より、かなり低め(約31セント)

『7Fハーモニクスと12Fハーモニクスを合わせる』といったチューニング方法が使われることがありますが、こうした音程のずれも知っておくと、より精度の高いチューニングができます。

ちなみによくある例として12Fの実音とハーモニクスでオクターブチューニングをすることがありますが、私の個人的な考えとしては開放弦と12Fの実音で調整する方をオススメしてます。いやだって皆さん実音とハーモニクスどっち多用します? どこぞの有名エロゲメーカーの人みたいにやたらとハーモニクスを多用する人じゃないなら実音で合わせた方が『使える』音になるのは想像に難くないと思うのですが。耳コピとかやってて思うけどみんな倍音じゃなくてアタック音聞いてるでしょ。そういう事ヨ。

実践:倍音を意識して練習してみよう

  1. ピッキング位置を変えて弾き比べる:ブリッジ寄り、12F付近、ネック寄りで音色がどう変わるか聴く
  2. ピックアップを切り替える:フロント/リアで倍音バランスの違いを感じる
  3. 12F、7F、5Fのハーモニクスを出す:開放弦の倍音列を耳と指で確かめる
  4. 歪みの種類・量を変えてみる:クリーン→クランチ→ハイゲイン、ファズとナチュラルなオーバードライブで倍音がどう変わるか聴く
  5. 単音とパワーコードを弾き比べる:歪みを深くして、濁り方の違いを聴く

まとめ

  • 倍音とは、基音の整数倍の周波数を持つ音の成分で、音色を決める要素
  • エレキギターでは、ピッキング位置・ピックアップ位置・弦・歪みなどが倍音バランスに影響する
  • 偶数倍音はオクターブや5度など協和する音程が中心で、太く温かい音色に寄与する
  • 奇数倍音は3度や7度などを含み、硬さ、輪郭、攻撃性をもたらす
  • 対称クリッピングは奇数倍音、非対称クリッピングは偶数倍音を増やしやすい
  • ハーモニクス奏法は、倍音を意図的に取り出すテクニック
  • 「奇数=悪い、偶数=良い」ではなく、目的の音に合わせて使い分けることが大切

このように倍音成分を意識するだけで音に対する理解力がかなり変わります。次回から実践してみて下さい( ノシ ・ω・)ノシ