エレキギターの『ヴィンテージ』『トラディショナル』『モダン』、結局何が違うのか

ギターやアンプについて調べていくと必ずぶつかるのが『ヴィンテージ系』『トラディショナルな感じ』『モダン仕様』みたいな、まぁ分かるけどイマイチはっきりしないようなワード。

ショップの店員も雑誌もYouTuberも当たり前のようにこれらの言葉を使ってくるけど、何となくこんな感じだよねみたいなぼんやりした感覚で流してる人が多いんじゃないかな?

日本語に直すと『年代物』『伝統的』『近代的』といった感じになるんですが、この違いを何となく分かってる人は多くても説明できる人ってなると大分減ると思うんですよね。

私自身youtubeや当ブログにてこういった表現を多用するわけですが、そこに認識の差異が生まれるのはよろしくないじゃないですか。

そこで今日はこの3つについてきっちりと解説していこうと思います。

そもそも何を指してるのか

ヴィンテージはさておき、これらの言葉って実際のとこ年代の話ではないわけですよ。

例えば1980年代に作られたギターでもモダン仕様のものはあるし、逆に去年発売されたばかりの新品でもヴィンテージスペックを忠実に再現したモデルは山ほどあるじゃないですか。つまりこれらは『時代』じゃなくて『設計思想』を表すラベルだと考えた方が自然なんですね。

  • ヴィンテージ = 50〜60年代のフェンダーやギブソンが確立した仕様に忠実。
  • トラディショナル = 見た目や基本設計はヴィンテージのラインを踏襲しつつ、製造精度やパーツの安定性は現代基準にアップデート。
  • モダン = プレイアビリティや現代の奏法に合わせて再設計された仕様。

トラディショナルなギターはいわば中間の存在ですね。ヴィンテージの『味』を残しながら、当時特有の粗さや個体差はできるだけ排除した製品って感じ。

分かりやすく言うと、見た目や音はイメージ通りなストラトやレスポールなんだけど、品質は現代風にアップデートされていてとても扱いやすくなっている製品ですね。

この辺りを明確に意識すれば以降の話が分かりやすくなると思います。

ネックの形状と太さ

一番分かりやすい違いがこれでしょう。

ネックはギターの命とも呼べるプレイヤーと楽器を繋ぐインターフェースですからね。

ヴィンテージ系はネックが太くて厚い傾向にあります。特に50年代のストラトなんかは『Uシェイプ』『Cシェイプ』と呼ばれる丸くてがっしりした握り心地で、正直今の感覚だと太くて弾きにくいなって感じる人が多いんじゃないですかね。

トラディショナル系は形状自体はヴィンテージ由来の『Cシェイプ』を踏襲しつつ、太さは少し抑えめに調整されていることが多い印象ですね。厚みはサウンドに大きな影響を与えるのである程度確保しておいて、けど演奏性を犠牲にしない絶妙なラインを攻めている感じ。

モダン系は前述のとおり薄くて平たい『Cシェイプ』や『Dシェイプ』が主流になってます。頭にThin(日本語で薄いという意味)って付いたら大体これです。ハイゲインなメタルサウンドが流行り出した7~80年代辺りから研究が始まり、私の記憶が正しければJacksonのソロイストが火付け役になってたはず。

指板Rとフレット

ヴィンテージ系は指板の丸み(R)がキツめ(7.25インチとか)になってます。コードストロークやクリーントーンの表現力は出しやすいんですけど、ハイフレットでチョーキングすると音詰まりしやすいといった欠点もあります。あとフレットが細くて高さもそこまでないって感じです。

トラディショナル系は指板Rを9.5インチ前後に緩めているモデルが多いのかなっていう印象ですね。ヴィンテージほど丸くはないんだけど、モダンほどフラットでもない中間値。フレットはヴィンテージと高さは変わらないけど、多少太くなってるモノが多いですね。

モダンは指板がフラット(12〜16インチくらい)で、フレットも高くて太いジャンボフレットが主流。なのでチョーキングやライトハンド、タッピングもスムーズに行えます。歪ませてリードプレイをガンガンやりたいぜって人はこれ系を選ぶと幸せになれますよ。

ピックアップの違い

ヴィンテージ系ピックアップはアルニコマグネットを使っていて巻き数も控えめ。出力が低い代わりに倍音が豊かでレンジが広いのが特徴ですね。クリーン〜クランチで鳴らすと枯れた感じの説得力ある音が出ます。

トラディショナル系は基本アルニコ+控えめ出力というヴィンテージの路線を維持しつつ、コイルの巻きムラや個体差を製造過程で抑え込んでいる感じですかね。『あの頃の音を、安定した品質で』みたいなのがコンセプトと考えると分かりやすいのかな。音の傾向自体はヴィンテージにかなり近いですね。

モダン系はセラミックマグネットや高出力巻き線を使ったハイゲイン仕様が多いかと。歪みに強いと言いますか、ハイゲインアンプやペダルに突っ込んでも音が潰れにくくなってます。メタルやハードロックをやるならこっちのほうが圧倒的に扱いやすいですね。

ちなみにどちらの音が良いかって議論が度々ありますけど、ハッキリ言って不毛だと思ってます。ジャンルが違えば当然正解も変わるわけですし。まぁこういうのって語り合ってる時が一番楽しかったりするんで気持ちは分かりますけどね。

ハードウェア(ブリッジ・ペグ)

この辺に関しては私があまり詳しくないので深堀は出来ないのですが、ヴィンテージ系はシンクロナイズドトレモロやビンテージペグ(クルーソンタイプとかグローバータイプとか)などが使われているのをよく見かけます。

トラディショナル系は見た目こそヴィンテージ然としたパーツを使ってますけど、内部構造や素材を見直してチューニングの安定性を底上げしてるケースが多いのかなと。レトロな見た目のまま実用性を上げてるって感じですね。

モダン系はロック式トレモロ(フロイドローズ系)やロッキングペグを標準搭載してるモデルが多いのかな。特にメタル系。

正直この辺って見た目もそうだけどサウンドに多大な影響を与えるので一概にタイプ別の仕分けがしにくいんですよね。ダブルロッキングトレモロだと木材(特にボディ材)の影響を受けにくいし、裏通しだとダイレクトに伝わります。シンクロナイズドトレモロにしてもフローティングかベタ付けか、スプリングの数やかけ方、ブロックの重量でも変わるじゃないですか。

以前にyoutube動画内でお話したことありますけど、ローラーナットとか使った事無いですし、ヴィンテージペグも弾き比べた事がないのでここに関してはイマイチどうこう言えないんですよねぇ。モダンタイプでも方向性によってはどれ使ってもおかしくないですし。

ジョイント部分の処理

ボルトオンネックの場合、ヴィンテージ系はハイフレットへのアクセスがそこまで考慮されていないので切り出しのままがデフォルトです。

トラディショナル系も見た目のシルエットはヴィンテージに近いものを保ちつつ、ヒール裏を少しだけ削ったり目立たない範囲でアクセスを改善してるモデルがありますね。

モダンはヒール部分を大きく削り込んだヒールレス加工が施されていて、22〜24フレットまでスムーズに指が届くモノが多いのかなと。

ただこのジョイント部の厚みも出音のコシみたいな部分で影響が大きいので、必ずしも演奏性が高い方が優れている、なんて言う事は無いんですよね。

その辺を考慮して、ジョイントプレートの有無やネックをボディ深くまで突っ込むディープジョイント、セットネックの場合はPRSのようなジョイント部は厚いんだけど、ハイポジションにアクセスするまでの部分は薄く仕上げてあるなんてパターンもあったりします。

ホントね、楽器って知れば知る程細かい違いがあって楽しいですよ( ๑•̀ㅂ•́)و✧

まとめ

そんなわけで『ヴィンテージ』『トラディショナル』『モダン』について解説してきたわけですが、

  • あの時代の音とクセをそのまま体験したい、細部までこだわりたい → ヴィンテージ系
  • ヴィンテージの雰囲気や音は残しつつ、実用面での不安は減らしたい → トラディショナル系
  • ハイゲインでリード弾きまくりたい、速弾きしたい → モダン系
  • 両方のいいとこ取りがしたい → 最近は『ヴィンテージルックス+モダン指板R+モダンピックアップ』みたいなハイブリッド仕様も普通に存在する

てな感じで優劣というよりも個性っていう感じが強い印象ですね。

これらを組み合わせていくとサウンド的にはヴィンテージ系だと出力が弱く、ミドルが太くて輪郭がぼんやりしているし、モダン系だと高出力なドンシャリサウンドでエッジが効いている傾向になります。

ここから更に価格帯というかグレード毎の音の特徴というか傾向みたいな部分にも踏み込んでいくと凡そそのギターが何を目指して作られたのかが分かるようになりますし、材や構成まで理解出来るようになると弾かなくても演奏性だったり音がある程度予想できるようになります。

結果、私のようなエレキギターオタクが完成しますね。万歳\( 'ω’)/

おまけ

個人的にはギター本体やアンプではなく機材(エフェクタやIR等)で音作りを追い込むタイプの人ほどモダンスタイルと言いますか、トラッドなモノでも特に最新のギターが向いていると思います。

ヴィンテージタイプのギターってそれ単体で色気があると言いますか、それそのものが個性みたいな部分があるんですよ。良くも悪くも個性が強いと言いますか、積み上げてきたモノやそもそもの個体差、洗練されていないバランス感が味を生み出しているんですね。

対して現代のギターってプレイヤーのその後の事を考えているのでエフェクターノリが良いと言いますか、素直な反応が返ってくるイメージがあるんですよね。言い方を変えるとピーキーさが無いから音作りが簡単なんです。

PEか3バンドEQ辺りの記事でも書いていたかと思うんですが、ヴィンテージ指向のPUはとにかくミドルに癖があってある程度の知識が無いと思ったような音になってくれないんですよ。そこに当時の仕様が重なってくると『ギターの美味しい所』に対する理解度が求められるんですね。

ちなみにその理解の極致に至った男の1人がエドワード・ローデウェイク・ヴァン・ヘイレンだと私は思っていますが、この辺の話まですると脱線に脱線を重ねた上長くなる(というか長くなった。最終的にEXの話になって本編の3倍近くなった。バカかよ)ので割愛します。

まぁ結論から言えば自分の好みに合わせて好きなの買えば良いし、よく分からんなら自分がやりたい方向性に合わせて選べばいいよって話です。はい。