ストラトキャスターは“完成された名機”ではない? Fenderが生み出した新しいギターの形

前回、Fenderが長年エレキギター界の頂点に君臨し続けている理由についてざっくり語らせて頂きました。
今回はその続きでもあり、本題でもあるストラトキャスターの話をします。

『ストラトキャスターは完成度が高い』『出来がいい』ってよく言われますけど、これは正直誤解されてる表現だと思ってます。
分かりやすく言えば、新品のストラトキャスターがあったとして、それがエレキギターとして完璧な1本である、という意味で完成度が高いと言っているわけではないんですね(まぁ近年のモデルはこの表現でも合ってるんだけど)。今回はその辺の勘違いをほどきつつ、ストラトキャスターが本当はどういうギターなのかを解説していきます。

テレキャスターが起こした製造方式の革命

まず前提として、テレキャスターの時点でFenderはとんでもないことをやってます。皆さんお馴染みのソリッドボディとボルトオン方式の採用ですね。今回はボルトオンのお話がメインになります。

当時のエレキギターってネックとボディを接着(セットネック)で組むのが主流だったんですけど、これだとネックの製造とボディの製造を並行して進めても、最終的に職人が手作業で接着・調整する工程がボトルネックになりますよね。

そこでFenderはボルトで組み上げる方式に切り替えることで、パーツごとの製造ラインと組み上げラインを完全に切り離すことに成功しました。ネック工程とボディ工程をそれぞれ効率よく回して、最後にボルトで結合するだけ。これによって量産効率が劇的に上がったわけです。地味な話に聞こえるかもしれませんが、これが後のエレキギター業界を変えていきます。

レオ・フェンダーが目指した"理想のギター"

テレキャスターで量産の仕組みを確立したレオ・フェンダー氏が次に目指したのは、更に進化した未来的なギターでした。
皆さんも一度は考えたことがあると思いますが、理想的なギターとは何ぞやと考えたレオ・フェンダー氏は、『ユーザーが求めているギターは1人1人違う』という結論に辿り着きました。

つまり、万人にとっての正解を1つのギターに詰め込むんじゃなくて、テレキャスターの不満点を解消しつつ、ギタリストが自分の好みに合わせて改造していけるプラットフォームを作ればえぇやんけと。これがストラトキャスターの生まれるきっかけになりました。

ストラトキャスターは"ベース機"として生まれた

当時のストラトキャスターは、完成品というよりベース機としての性格がかなり強いギターでした。3つのピックアップにトレモロアーム、コンター加工されたボディといった当時最先端の装備を載せつつも、そこから先はユーザーが自分好みに調整・改造していく余地をしっかり残していたんですね。ピックガードマウントとかが良い例かな。

私はyoutubeの動画内で『Fenderのストラトは基準であって良いも悪いも無い』『他のギターの良し悪しを相対的に図る際の基準としてFenderを使ってる』『価格と品質の釣り合いはFenderより良ければコスパ良いって言えるしFenderはどこまでいっても普通』って言ってるのはこういう事です。※ショップオーダーモデルとかは別だよ?

逆にFenderのストラトキャスターの音を聞いて育ってきた人からすると、ストラトキャスターはエレキギターのとしての基準ではなく、それこそが正にエレキギターとして理想の音だっていう価値観を持っていると思います。

これに関しては考え方というより思想、宗教の話なので、どちらが正解っていうわけでもないです。むしろどちらも正解だという方が正しいでしょう。
なので私がこういう事を書いたからそうなんだ、ではなくこういう側面もあったんだなっていう豆知識程度に覚えておいてください。じゃないと戦争が起こります。

現行機ではどうなっているのか(’’?

なるほど昔の話は分かったと。では現在のストラトキャスターはどうなっているのか気になりますよね?

現在は長年蓄積されたデータを基に、モデル毎の音や弾き心地の特徴はかなり明確に作り込まれるようになっている印象があります。American ProfessionalとPlayerで狙ってる方向性が違う、みたいな話ですね。

当然デフォルトのままでも十二分に使えますし、もし気になる所があれば後から好き勝手弄れるので本当に痒い所に手が届く良いギターに仕上がっていると思います。
そもそもレオ・フェンダー氏はジョン・サー氏と同様に職人ではなく開発畑の人なので、木工芸術というより演奏する道具としてエレキギターを開発してますからね。その理念は氏が去って61年経った今も変わっていないように見受けられます。

カスタムコンポーネント市場への影響

ストラトキャスターが生まれたことによる副産物として見逃せないのが、カスタムコンポーネント市場の広がりです。ボルトオン方式かつ改造前提の設計だったからこそ、サードパーティーのピックアップメーカーやパーツメーカーが参入しやすい土壌ができました。

今では市場にピックアップやパーツだけでどれだけの選択肢があるか、というレベルまで発展してますけど、これも元をたどればストラトキャスターというプラットフォームがそれを許容する設計だったから成立してる話なんですよね。

まとめ

ストラトキャスターはそれ自体が完成品として世に出されたギターじゃなくて、改造されることまで含めて完成する工業製品なんですね。だからこそ『出来(仕組み)が良い』『完成度が高い』と言われるのであって、それは1本の楽器としての作り込みの話じゃなく、プラットフォームとしての設計思想の話なんですよ。

次にストラトキャスターを見る時は是非とも『これは完成品じゃなくて、自分で完成させる土台なんだ』という視点で眺めてみてください。今まで見えてなかったストラトキャスターの本当の凄さが分かると思います。

追伸:この話を頭に入れた上でフェンジャパの歴史とか見ると面白いかもですね。そのままFUJIGEN信者になる人とか出てくるんじゃないかな꜀( ꜆-⩊-)꜆♡